診療内容

扱う病気

まずは病気を理解し、知識を持っていただくことが大切です。


おしりの構造


痔核(いぼ痔・脱肛)

痔の中で最も多い

便秘などによる排便時のいきみや長時間おなじ姿勢を続けることで、肛門に負担がかかり、肛門の組織がゆるんで、血管が切れて出血したり、うっ血していぼのように出てきます。
痔核は発生場所により「内痔核」と「外痔核」に分けられます。

内痔核

脱出の程度によりⅠ~Ⅳ度に分類されます。


急に激しい痛みを伴うもの

血栓性外痔核
肛門周辺に小豆大の血栓ができます。強くいきんだ後やスポーツ後に、急に痛みが出てきた場合、これを疑います。軟膏・内服薬などでほとんど治りますが、治りが遅い場合や、痛みが強い場合は、局所麻酔で血栓をとればすぐに治ります。
嵌頓痔核
脱出した痔核内に血栓ができ、大きく腫れ、戻らなくなった状態です。激しい痛みを伴います。まず薬で大きな腫れをとり、嵌頓する前の状態に戻し、、このまま何も治療しなくてよいか治療が必要なのかを決めます。

治療方法はともに薬だけで治ることがほとんどです。


内痔核の治療方法

内痔核の治療の基本は軟膏坐薬・内服薬を使った保存療法です。この治療を行なっても出血を繰り返す場合や、脱出によって日常生活に支障をきたし保存的な治療が無効な場合は手術となります。実際に手術が必要な場合は、15〜20%ほどです。手術は最も再発が少ない確実な方法です。手術は結紮切除術と呼ばれる根治的な方法で行われます。当院では手術に半導体レーザーメスを用いるため、痛み・出血・再発の少ない手術が行われます。以前行われていたPPH法は、最近ではあまり行われていません。最近はALTA療法【内痔核硬化療法】の出現で、一部の症例では手術せずに治療することができるようになりましたが、再発率は約75%と報告されていますのであまりひどいもの(Ⅲ度でひどいもの、Ⅳ度)には行わず、症例を選んで行なっております。再発した場合は、手術となることが多いようです。


裂肛(切れ痔)

女性に多い痔です。特に20~40歳代に好発します

硬い便や下痢などにより、肛門の皮膚が裂けて痛みと出血があります。慢性化すると、肛門が狭くなり、便が細くなることもあります。

いわゆる「切れ痔」という状態で、歯状線より外側の肛門上皮という部分の裂創をいいます。肛門上皮は痛覚があり排便時に痛みを伴います。原因は便秘による硬便などによることが多い。慢性化すると裂創付近の炎症によって肛門ポリープやスキンタグと呼ばれる皮膚のたるみを形成します。また、潰瘍形成を繰り返していると、肛門狭窄となります。
肛門の浅い皮膚部分が切れて痛む症状です。
ダイエットにより腸の働きが鈍り、便秘になっても症状が悪化するため女性に多いことも特徴です。痛みを怖がり排便を我慢すると便秘が進み、さらに肛門が切れるといった悪循環に陥る前に、専門医に相談してください。




治療方法

基本的には薬物療法です。初期のもの(急性裂肛)は、生活指導と内服薬と外用薬(軟膏・座薬)だけでほとんどがよくなります。
肛門狭窄や見張りイボを伴うもの(慢性裂肛)では、まず生活指導と薬物治療による保存的治療を行いますが、あまり症状の改善が認められない場合は、手術となります。手術はその程度により次の2つに選択されます。
手術方法
●LSIS(側方皮下肛門内括約筋切開術・慢性裂肛切除)

ほとんどの症例はこの方法で行われます。手術時間は約15分ほどです。

●SSG(皮膚弁移動術)

狭窄がひどい場合はまれにこの方法が行われます。手術時間は20分ほどです。


※稀に裂肛より細菌が侵入して化膿、その後痔瘻になることがありますが、この場合は痔瘻根治手術となります。





痔瘻




男性に多い痔です。
まず肛門周囲膿瘍ができ、痔瘻へと進んでいきます。

肛門小窩に小窩に開口している肛門線に細菌が侵入して感染を起こし膿が溜まったものを肛門周囲膿瘍と言います、痛みが強く、発熱することもあります。






治療方法

膿を出す切開が必要です。(まれに自然に破れます)。膿が出ますと、痛みは急になってきます。切開後暫くすると細菌が侵入した肛門小窩(1次口)から膿が出た所(2次口)までトンネルができます。時々2次口から膿が出てきます。トンネルは残るので、化膿を繰り返すことが多いです。化膿を繰り返すと複雑化、癌化することがあるので手術が必要です。薬のみでは治りません。痔瘻はトンネルの走行で4つに分けられ、手術方法が決まっています。当院では括約筋を損傷しない括約筋温存術がほぼ全例に行われています。
●切開開放術
●括約筋温存術
●シートン法






痔と紛らわしい病気

痔かな?と思う症状の中に、他のおしりの病気や大腸からおこるものもあります。

大腸がん

大腸の内壁を覆う粘膜で発生し、進行とともに徐々に深い層まで進行していきます。初期はがんが粘膜や粘膜下層にとどまっており、症状はほとんど現れません。
進行すると、「血便」「便が細い」「肛門に違和感がある」「便がでにくい」「下痢と便秘を繰り返す」などの症状が現れます。
直腸やS状結腸に発生することが多く、早期に発見して治療すれば、治る可能性の高いがんですが、痔と間違えやすく、初期症状を見逃しやすいので要注意です。

治療方法

早期に発見すれば内視鏡治療が可能です。進行した場合は手術や抗がん剤治療が必要になります。出血があった場合には、痔からの出血と自己判断せずに大腸 ・ 肛門疾患の専門医に相談してください。

大腸ポリープ

大腸の粘膜が盛り上がってできる「いぼ」のようなものです。放っておくと大きくなり、がんになるものもあります。
症状がない場合が多く、検診の内視鏡検査で偶然発見されることも少なくありません。
肛門に近いものは出血を伴うこともあるため、痔と間違いやすく、要注意です。

治療方法

そのまま放置しておいてもよいものもあります。放っておくと、がん化する可能性があるものは、大きさによって内視鏡的に切除します。

直腸脱

排便でいきんだり、腹圧をかけた時に、直腸が肛門から脱出してしまう病気です。
痔核と間違えやすい病気です。

治療方法

脱出により日常生活に支障が出る場合は、手術の必要があります。
当院では、肛門から行うガント・三輪法、チィールシュ法の組み合わせで行います。

潰瘍性大腸炎

大腸の壁の比較的浅い部分に炎症が起こり、潰瘍ができる病気です。
病変は直腸から起こり、大腸全体に広がることもあります。下痢や血便・粘血便、腹痛を認めます。悪化すると発熱や体重減少が起こることもあります。

治療方法

病気の広がり方や重症度、炎症の勢いによって、薬を使い分けたり組み合わせたりします。
症状によっては外科手術が必要なこともあります。

クローン病

大腸や小腸などに炎症が起こる病気です。炎症が腸の壁の深い部分に達すると、腸が狭くなったり、穴が開いたりします。
典型的な症状は「繰り返す下痢と腹痛」です。血便も見られます。炎症が強くなると、発熱や体重減少を認めます。
肛門に痔瘻や裂肛が生じることもあります。

治療方法

●適切な治療を行うことにより、安定した状態を維持することが目標です。
栄養療法や薬物療法が一般的ですが、
腸が狭くなったり、穴が開いた場合は外科手術を行います。

肛門掻痒症

肛門とその周囲がかゆくなる病気です。痔によるかゆみもありますが、皮膚の湿疹や皮膚炎を伴う場合が多いようです。
入浴後や夜間に無意識に掻いてしまい、出血や痛みを伴うこともあります。

治療方法

辛いものやアルコール摂取を控えましょう。また、おしりを清潔にし、掻かないように注意します。
軟膏を塗って治療します。
繰り返すと治りにくくなるため、早めに専門科を受診しましょう。

機能性直腸肛門痛

痛みが出現する肛門疾患がないにもかかわらず、肛門に痛みを感じるものを呼びます。
痛みの程度は違和感程度の軽いものから夜も眠れないほどの強いものまで様々です。
原因としては神経性のもの、筋肉のけいれんや凝りによるものがあります。

治療方法

痛みが強い方は鎮痛剤や神経ブロックが必要になります。
抗うつ薬が有効な場合もあります。

膿皮症

汗腺に細菌が繁殖して広がってゆき、皮下に膿がたまってできます。
腫れと排膿を認めます。
痔瘻と間違えやすい病気です。
非常に複雑であったり、広範囲であったり、時に痔瘻を合併していることもあります。

治療方法

放置すると広がる可能性があるため切除が必要です。

毛巣洞

尾骨部に発症する膿瘍で、毛が皮下にもぐりこみ、炎症を繰り返すことにより形成されると考えられています。
毛深く若い男性に多いと言われていますが、女性にもあります。

治療方法

切除して縫合します。
座って圧のかかる場所であり、すぐ下に尾底骨があるため、治癒まで多少時間がかかります。

皮垂

肛門周囲の皮膚が腫れた後に残った皮膚のたるみです。
痛みがなく、柔らかく、外痔核とよく似ています。

治療方法

そのままにしておいても問題はありませんが、次第に大きくなっているようであれば、病院を受診しましょう。

肛門ポリープ

裂肛を繰り返すと、肛門にできるイボです。
単独でできることもあります。

治療方法

大きくなり、出血や脱出で不快な場合は切除します。

肛囲毛嚢炎

肛門周囲の皮膚が、毛穴に一致して赤く腫れます。膿や痛みのあるしこりを認めます。
痔瘻と似ています。

治療方法

自然に治る場合もありますが、痛みや腫れがあれば病院を受診しましょう。

尖圭コンジローム

肛門周囲にできるいぼでヒトパピローマウイルス感染症です。
皮膚と粘膜移行部の湿った肛門、肛門管、会陰部の皮膚にできやすく、肉眼的にはピンク色から灰白色の小さいイボ状の病変が単発または多発します。

治療方法

軟膏治療や外科的切除を行います。

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